今や若い女子たちに大人気の韓国旅行。
韓国といえばやはり行きたいのはショッピング、おしゃれなカフェ、K-POPや韓国ドラマの聖地巡礼、最新の美容……
いや、牛の金玉を取る劇だろ。
ということで、牛の金玉を取る劇を韓国まで見に行ってきました。
牛の金玉を取る劇が見られるのはソウルから高速バスで3時間、そこから市バスを乗り継いで30分で着く河回村(ハフェマウル)という村。今回はソウルから日帰りで金玉劇を見に行くことにしたよ!
まずはカンナムの高速バスターミナルで安東(アンドン)までの高速バスのチケットを購入。1日満喫したいので7:20のバスを選択。
自動券売機で日本語も出るし、クレジットカードも使えるので超簡単に買えた!24000ウォンくらいである。
バスに乗ったらひたすら寝続けること3時間で安東に到着。途中にトイレ休憩があったのだが、韓国人みんなバスに戻るの早くて焦った。
すぐ近くの市バス乗り場に行き、河回村行きの210番バスを待つ。
その間に一応帰りのバスのチケットも確認しておくか〜と思い券売機をチェックすると、なんと17時台と19時台のチケットはもう売り切れてる!!そして終電である20:10のチケットも残り3席!!あぶね〜〜〜!!急いで帰りのチケットも確保した。危うく安東から戻れなくなるところだった……。もし同じ行き方するなら先に帰りのチケットを絶対確保することをおすすめする。
(ちなみに一応ソウルまでは電車もあるのでガチで戻れなくなることはない……とは思う)
そして市バスに揺られること30分で河回村である。バスの中は河回村に行く観光客しかいないので、みんなと同じところで降りればオッケー。
到着したらまず村の入り口(河回村停留所)でチケットを買い、腹ごしらえ!

安東はチムタクとという鶏の甘辛炒め(右のデッカい料理)と鯖の塩焼きが有名らしく、どこもその料理しかない感じだった。適当に入った店だったけどめっちゃ美味しかった!
そのあとはシャトルバスで村に移動する。シャトルバスは結構な本数出てるみたいなので、時間とかは気にしなくて大丈夫そうだった。

村に着いたら散策。昔からの建造物が立ち並び、「日本で言うところの白川郷みたいな感じかな?」と言ってたら本当に白川郷と姉妹都市らしい。ここもまだ人が普通に暮らしてるそうだ。

しかし昔ながらの建物の中には入れなくて残念だった&4月なのに暑すぎてキレそうになってきたので、早々に金玉劇が見られる伝授館の中へ。
さて、ここまで金玉金玉言ってきて一体なんのことなんだよ、とお怒りかも知れない読者諸兄に金玉劇とは一体何なのかということを満を持してお教えしよう。
これから紹介する金玉劇は、正式名称を「別神(ビョルシン)グッタルノリ」という。韓国には仮面をつけて舞い踊る「タルノリ(タルチュムとも)」という民俗芸能が全国に伝わっており、ユネスコ無形文化遺産にも認定されているという。タルというのが韓国語で「仮面」、ノリは「遊び」(チュムは踊り)という意味である。イメージ的には日本の田楽のような感じであり、庶民による砕けた表現が特徴らしい。
韓国は昔両班(ヤンバン)という貴族階級が庶民を厳しく取り締まっており、その中で庶民たちが両班を風刺して鬱憤を晴らす劇が出来上がっていったのだという。なぜ劇は取り締まりの対象外だったのか不思議だが、関わると両班の品位に傷がつくと考え、祭りの日だけは特別ということで見て見ぬふりをしてくれていたそうだ。両班、意外と話のわかるヤツ……!村人にとって、この日だけは普段なら絶対馬鹿にできないはずの両班をいじることのできる貴重な日だったのである。
そして「別神グッ」というのは祭祀を指し、ここ河回村では本来村の神である城隍神の祭祀の際に演じられてきた劇だったそうだ。タルノリは全国で今も演じられているが、現在見られるのは娯楽としての演劇的な性格が強いものがほとんどで、祭祀のタルノリはたいへん貴重らしい。
基本的にイベントの日や祭礼の日しか見られないタルノリだが、ここ河回村の「別神グッタルノリ」は専用の劇場が設けられ、火曜日~日曜日の14:00から公演が行われている(冬期は週末のみ)。つまり祭りに行かなくてもタルノリが見られる素晴らしい施設なのである。
そしてその内容が、「牛の金玉を取る劇」だというではないか……伝統芸能でありながら、そしてユネスコ文化遺産でありながら、牛の金玉を取る劇とは……!!??となり、このたび遠路はるばる足を運んだのである。
ちなみにちょうど金玉劇見たいなぁと思っていたところに友人から「ソウルに行くんだけど、合流して遊ばない?」と誘いがきたので「金玉劇見に行きたい」と打診したら快く受け入れてくれた。友人は初韓国な上にふつうの女子なのに、金玉劇のために四時間バスに乗ってくれてありがたい。
劇は日本語字幕がついているという噂だったのだが、オープニング映像で流れた別神グッタルノリの由来のアニメは韓国語に英語字幕だったので「??」という感じだった。
アニメの感じから察するに「村に災いが起こり、村を救うために青年が神のお告げで仮面を作り始めた。その仮面づくりは誰にも見られてはいけないものだったのだが、青年のことを好きな女性がその作ってる様子を覗いてしまった。禁忌を破った青年はその場で死に、女性もあとを追って死んだ」みたいな感じだったのだが、あとで調べてみたら本当にそういう由来らしい。
そしてその後村人は青年を城隍神として祀り、弔いとしてタルノリを始めたのだそうだ。
いかにも韓国風なチャルメラの音楽を楽器隊が奏でだし、いよいよ開幕である。
しかしモニターには韓国語と英語でしか解説が出なかったので、うっかりよく分からないまま始まってしまった。

ひとつめのオープニングアクト風の劇が終わると、謎の動物っぽい仮面の踊り手が出てくる。(あとで博物館に飾ってあるのを見たら獅子らしいが、全然獅子っぽくない……)
こちらも日本語訳がなかったのでよく分からずに舞が終わってしまった。
「あれ?日本語ないのかな……」と不安な気持ちになりながら見ていると、次の演目では早くも牛が出て来た!!

思ってたより可愛い感じの牛である。

そして画面には急に日本語字幕が出てきた。助かる。

この牛は屠殺人である白丁(ペクチョン)に殺されてしまう。殺されるとき、観客がみんな「ああ〜……(悲)」て声上げてて面白かった。牛可愛かったので……
殺された牛から屠殺人がハツを取り出し、観客に向けて「買いませんか〜」と言い出す。誰も買う人がいないので、屠殺人はまた牛のところへ戻っていく。そして牛の下腹部にナイフを入れ、取り出したのは……

早速の金玉!

ふぐり!ふぐり、知りませんか
ヤバ字幕である。
韓国で見る「ふぐり」の文字の破壊力。
まぁ日本でも「ふぐり」の字幕なんて見たことないが……。

牛のキンタマですよ。
ふぐりからキンタマに呼び名が変わるの絶妙すぎる。中国語だとずっと牛卵子なのに……日本語の睾丸の呼称が多すぎるのだろうか。
「ウラン サソ ウラン!」という屠殺人の言葉になぜか私は「ウラン……!」と反応しているのだが、あとで調べたらウランは「牛の金玉」って意味らしい。韓国語わからんのに金玉だけ謎にリスニングできてるの何なんだ。あと金玉出てきたとき「お~~」って言ってるのもじわる。
基本的に内容は字幕の通りなのだが、細かく翻訳するとこんな感じである。
「ヌガ チンチャ ウラン サソ ウラン!」=「誰か本当にふぐり買ってふぐり!」
「ウラン アムド モルニッキョ?」=「ふぐり誰も知らない?」
「セブラル マリシダ!」=「牛の金玉のことだよ!」
ウランもセブラルも牛の金玉のことを指すが、そもそも日本語には「牛の金玉」という単語はないためふぐりとか金玉とか言葉の言い換えをしていたようだ。というか、「牛の金玉」という単語が何種類もある韓国語すごい。ちなみに韓国では牛の金玉はことわざにもしばしば登場するらしく、かなり生活に根付いた存在であったことが想像される。
屠殺人は観客に絡みだし、睾丸を売りつける。
翻訳カモメという翻訳アプリにかけたら、「この家には子どもが一人しかおらんのか?二人目は作らないのか?」と言ってるらしい。最悪の絡みだ……(笑)
何人か「買います〜」と言ってる人もいたが、ストーリーの都合上それは取り合ってもらえず、「今日は全然売れなくて一文無しだ〜踊って帰ろう」と言って屠殺人は踊りながら帰っていく。
日本で男根が出てくる民俗芸能は結構見に行ってるけど、睾丸が出てくるのは見たことないので面白すぎた。牛の睾丸が精力剤というのも、日本の芸能には絶対出てこなそうな価値観だ。見に行く価値ありまくり。
満足満足、と思いながら次に続く演目を2つほど見たあとに出てきたのが「僧の場」である。
解説文が韓国語で出てきて読めないのでグーグル翻訳にかけた。

え、翻訳合ってる??
おしっこ臭いを嗅いで欲情に勝てず?????
何を言っている?
と思いながら舞台を見ていると……

出てきた女性役がおもむろにしゃがんで尿をしだす。こんなところでするな。翻訳合ってたぽい。もうやばい……

そしてそれを見ていた僧がその放尿した土をかき集めて臭いを嗅ぎ出す。やばい………
本当にこの僧キモすぎるので、是非動画で見てほしい。動き、喋り方、顎のカクカク、完璧にキモい。すごい変質者ぶりである。
あまりのキモさにか、観客の白人達がここで次々帰っていて笑ってしまった。意識高い国の人たちには耐え難い演目なのかも知れん。
キモすぎて本当に笑い止まらなかった。日本の郷土芸能も男根系のはいろいろあるけど、さすがにここまでキモいのはないと思う。完全敗北の気持ちである。
そもそも尿の臭いで欲情するって設定がマニア向けすぎるだろ……なんで現代まで残ったんだこれ。両班はちゃんと取り締まれよ。
そして僧と女性は最後一緒に踊っていなくなった。尿かき集める僧と踊れる神経を疑う。
笑い疲れたところで、最後は「学者と両班の場」である。学者が両班と張り合って位の高さなどを自慢する風刺劇が描かれる。

普通に面白いと思いながら見ていたら、また牛の金玉を持った屠殺人が出てきて金玉売り始めた。まさかの金玉アンコール。
だが両班と学者は全く屠殺人に取り合わない。

「下品にもほどがある。」←その感覚あったんだ。
しかし屠殺人が金玉は精力剤になると言った途端、両班たちの目の色が変わる。
ここから怒涛の、両班たちによるふぐりの奪い合いが始まる。

急に人気になるふぐり。
字幕と舞台で繰り広げられる奪い合いで目が忙しすぎる。

ああ、俺のふぐりが破けちまう
相変わらず前代未聞のイカれた字幕である。
そして喧嘩を見ていたおばあちゃんに怒られる両班たち。

めちゃくちゃである。

そしてそのまま最後はなんかよく分からんけどみんなで踊ろう!となって踊って終わった。え?なんで?ふぐりの奪い合いはどうした?????
どうやら踊ることでなんか大円団ぽくするというのがタルノリのやり口らしい。めちゃくちゃな話のオチを踊りで誤魔化していてすごい。
屠殺人登場~大団円の動画はコチラ↓
最後写真撮影タイムがあったので尿好き僧の隣に座ったら、顎カクカクいわしながらめっちゃ近づいてきてキモすぎて最高だった。ファンサが手厚い。

牛の金玉目当てだったけど、正直尿好き僧がダントツですごかった。ソウルから4時間かけて来た甲斐ありまくりである。韓国の郷土芸能、強烈すぎて日本人として悔しいまである。他の地域のタルノリがどれくらいヤバイ内容なのか全く知らないけど、他の地域のも見てぇ〜〜となりました。何も知らずに来た白人各位のことだけが心配です。
劇を堪能したあとは、シャトルバスで村の入り口に戻って仮面博物館を見学する。
この仮面博物館も本当に面白い!

韓国全土のタルノリで使う仮面が展示してあり、その個性の豊かさに完全に魅了されてしまった。
解説文は韓国語だがグーグルレンズで翻訳できたので楽しめたし、図録も売っていて助かる。


世界中の仮面が展示されていてそれも面白いが、韓国のタルノリのポンチ感が圧倒的に魅力的に感じた。河回村の仮面はずっと使っているもので精巧だけど、基本的には1回だけ使って捨ててしまう仮面のほうが多いらしい。これはタルという言葉が仮面という意味の他に「病気」「災厄」という意味もあるからだとか。1回しか使わないからいい感じに適当な作りのものも多くて、とても味がある。病気の人を笑いものにするという内容も多かったため、顔が歪んでいたり天然痘を表した仮面などもあるのが興味深い。


ほかのタルノリも見に行きたいと思いつつ、解説文を読んでも別神グッタルノリほどやばそうな内容のものはなかった。もしかしたら隠されてるだけなのかも知れないが……。
閉館時間まで楽しんで、帰りはバスを待つことになりそうだったのでタクシーで安東へ。27000ウォンくらいだった。安東駅には仮面の人形焼が売っていたのだが、賞味期限が短すぎて諦めた。こんなにおみやげにしやすいコンテンツなのに、お菓子とか全然なくてそれだけが残念だった。牛のふぐり饅頭とか作ればいいのに……。
終電20時のバスもぐっすり眠りながら帰り、無事ソウルに到着!日帰りでも十分行ける距離だったので、ソウル旅行のついでに足伸ばしたい方にも超絶おすすめである。
帰国後調べたらタルノリは日帝時代に規制されて壊滅状態に追い詰められたらしく、日帝はほんまに何をやらしてもクソ。開放後に復活してくれて本当に良かった……!
次は別の地域のタルノリを是非見てみたいので、博物館で買った仮面図録を見ながらいろいろ調べていこうと思います!
【参考文献】
金両基『韓国仮面劇の世界』
田耕旭『韓国仮面劇:その歴史と原理』
公式HP (韓国語)
公演日程(2026年):【1・2月】土日【3~12月】火~日 14:00~15:00


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