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NHK Eテレ「はなしちゃお!~性と生の学問~『性器崇拝✕民俗学』」出演しました&裏話

コロナ期に男根崇拝の研究から足を洗い、すっかり真人間として生きていたわたくし。

なのですが、なぜかこのたびNHK Eテレに出ることになってしまいました。

2023年12月半ば、なぜかインスタ経由で性器崇拝の祭りを取り上げる番組(←正気か?)への出演依頼が届く。
しかしもうすでに研究者ではないという点、そして自分の論は今までの性器崇拝の研究とは内容が少し異なる点、また純粋にテレビ怖ぇという点から、自分より性器崇拝に精通している偉い先生の名前を教えてそちらにお願いしてくださいと言ってお断りしました。

ただ祭りの写真や情報は提供できるのでそれは何でも聞いてくださいね〜とお伝えしたところ、まだ扱う祭りも決まっていない段階だったのでとにかく大量の写真を提供、そして男根崇拝祭りの基礎知識や定義について教えたり、ロケ地の選定、またロケ候補地との連絡係とパイプ役など色んなことをやることになってしまい……

確かに性器崇拝そのものに詳しい先生はいるけど、性器崇拝の祭りに関して自分よりたくさん行ってる人はほかに知らないんだよなぁ……
と言うことで誰かに投げることもできず、先方からも再度出演してくれと言われて最早断れないくらいズブズブに入り込んでいたので出演することにしました。

またそれまでロケ地の選定で先方からの要望に沿った祭りとしてしねり弁天か雪中花水祝がいいと思ったので(個人的にめっちゃ好きな祭りというのもあるけどね)激推しプレゼンして現地の人と繋いだりしていたのに、急にディレクターさんが「徳島の姫神祭りにロケ行くことに決定しました!」て言い出して「嘘だろ!?正気か!!?」となってしまってこっちも狂ってしまい出演許可してしまった感もある。

だって姫神祭りって、これだぜ???

今まで40の男根祭り行ってきて、一番激ヤバな見た目の、この祭りだぜ???

NHK、これ映せる??


しかしそのロケ地が姫神祭りに決まりました〜という連絡のあと、年末年始に1週間ほどディレクターさんからの音沙汰がなくなった。

私は
「あ、あの若いディレクターさん、絶対に上層部から怒られてこの企画なくなったんだ」
と確信した。

だがロケをすると言っていた1月10日の約1週間前になったけどまだ特に連絡なかったので、さすがに確認したほうがいいか…と「スケジュールどうなりました…?」と連絡してみることに。
すると「予定通り徳島行きます!」という衝撃の返事。お蔵入りじゃなかったんかい!!wwww

そこから徳島の神主さんに連絡して祠を開けてもらう手はずを整えたり、めっちゃドタバタで諸々が進む。
そもそも今時期的に祭りをやってるわけじゃないので、徳島で何をするのかもあんまりよく分かっていない…。

「船が出せそうなら、近くの島に奉納された男根があるのでいい感じの映像が撮れると思います」と自ら提案してしまい、大大大苦手の船に乗ることになってしまったので、酔い止め薬だけとりあえず忘れないように持ってロケ前日の夜遅くに徳島へ。群馬から7時間かけて牟岐町に到着。相変わらず遠すぎる。

朝イチで船に乗ると言うので、朝食はあんまり食べないで早めに済ませた。前回は定食食べて船酔いして全部海に放出したので……

ちなみに前回船酔いしまくった姫神祭りの記事は都築響一さんの有料メールマガジン・ロードサイドウィークリーで読めます↓

日本性祭紀行6 徳島県牟岐市の姫神祭り(写真・文:深沢佳那子) | ROADSIDERS'weekly
男根祭りというとまず思い浮かべるのは神奈川県川崎市の「かなまら祭り」のように大きなご神体を担ぐような祭りではないだろうか。実はああいった大きな男根を担いだり引いたりする祭りというのは、その多くが高度経済成長期以降に始まった観光客向けの祭りである。もちろんその背景には昔から行われてきた性器崇拝という信仰があるものの、大き...

朝スタッフの方々と合流し、まず大島という離れ小島へ奉納された男根を見に行く。

カメラマンさんは普段ドラマとかを撮られている方だそうで、「なんでこんな番組を撮ることに…?」と言ってしまった(失礼)。

姫神祭りは高度経済成長期以降にできた新興の性器崇拝祭りで、大島に奉納された男根を元にして1968年に例の男根シンボルを制作して始まった祭りだ。

更にこの大島に向かう途中には男根岩がある。そしてそこのコメントを求められたのだが、これが死ぬほど難しくて説明がうまくできず大変だった。

真ん中にある、しめ縄を巻かれているのが男根岩。

なぜならこの岩は男根岩ではなく、「急に男根ということにされた岩」だからである。
この岩は元々信仰対象でもなく、また男根とされてきた岩でもなかった。
しかしこの姫神祭りが開催されるにあたり、もしくは開催される直前頃に、「男根岩ということにして信仰対象に担ぎ出された岩」なのである。つまり男根の祭りを行うためにこの岩は男根岩になったのだ。
 
自分のブログや論文なら迷わずそれを書くが、テレビ、しかも地上波である。地元の人が男根岩ということにして祭りを行っている以上、さすがに部外者がそれを言ってしまっていいのか、分からなかった。

本当なら「これは男根岩で、この地に伝わる伝説でお姫様が海に身投げをしたところ隆起した岩とされています」と説明してしまえばめちゃくちゃ簡単なのだが、実はそのお姫様の伝説も昔からあるものではなく、高度経済成長期頃にあとから作られた付会の物語なのである。

だが今はこの昔話も牟岐町史などに掲載され、さも昔から伝わる物語かのように伝承されつつある。
ここで馬鹿正直に「お姫様と男根岩の昔話がありますがこれは最近作られたもので〜」などと言ったら迷惑になってしまうかもしれないので、それに言及することもどうしてもできなかった。研究者的解説と、表面的解説を両立するのが難しすぎる。

結局放送ではこの部分は全カットとなっていた。
わたしの歯切れが悪かったのもあるだろうけど、センシティブな部分を放送しないという選択を取っていただきありがたい。

でも正直なところ、そうやっていろんな要素を組み合わせたりこじつけたりして作られたという点こそが高度経済成長期以降の新興の祭りの魅力であり面白さなんだけどね〜。

あと男根岩へのリアクションもちょっと求められたけど、見慣れてるから普通にノーリアクションで申し訳なかった(笑)


そうこうしているうちに船は大島に着く。

大島の奉納された男根は天保年間の記録が残る古いもので、また女神への奉納物なので非常に説明しやすくありがたかった(笑)

女神が男根を好むため男根を奉納するという習俗は全国的に見られるもので、この大島の男根も海上の安全や豊漁を祈念して海の女神に奉納されたものである。

という説明をしていたら、ディレクターさんから「なんで女神は男根を好むんですか?」という質問が飛んできたので「女は男根が好きという、男性社会が作り出した幻想によるものです」と答えてしまったが色々危なそうな発言なのでこれはカットをお願いした(笑)でも間違ったことは言ってないと思ってます^_^

そのあと港に戻ったあとは雑談のようなところを色々撮られていたので、正直何を喋ったかあまり覚えていない。
とにかく酔い止め薬の副作用で喉と唇がカピカピになっていたことだけ覚えている……。

海の前やシンボルの前でも撮影したが、やはりそれもカットとなっていた。というか私が喋っているのは使われてたけど横にいたはずのシンボル部分がカットされていた(笑)やっぱりあのシンボル、ギリギリ放送NGなのか?(笑)
それにしても丸一日撮影して、それの一部しか使わないの本当にテレビ作るって大変だぁ………

雑談みたいなところを撮影されていたので放送まで不安しかなかったけど、本当に完結に素晴らしくまとまっていて良かったです!

また思っていた以上に友達やフォロワーさんが喜んでくれたので、出てよかった〜と思いました。そして自分の声が低すぎて笑えた(笑)「これが男根ですね」というパワーワードの声のトーンが面白すぎて我ながら笑い死ぬかと思いました。

あとどうでもいいけど朝の撮影はめっちゃ顔がむくんでて後半はむくみが取れていってたな…(笑)

むくみが取れてきた時間帯のフカザワwith猫

今回性器崇拝の祭りというひとつのテーマで番組を作っている以上祭りすべてを総括して何か意見を求められるのは仕方ないことなんだけど、当然祭りはそれぞれ作られた背景も目的も違うのでなかなかひとくくりにそれをまとめることはできなかった。
そのためいろんな質問にかなり歯切れ悪く答えることになってしまったけど、それはやはり「一言では言えない」というのが大きい。

またディレクターさんに「元々あった信仰から高度経済成長期以降に発展した性器崇拝祭りの数は14でいいか」と聞かれたが、「『元々あった信仰』の定義も曖昧なために『10以上』という表現にとどめておいてほしい」とお願いしたり、かなり細かく「言い切ること」への踏みとどまりを頼んだ。
テレビだと絶対言い切ったほうがいいよねぇ…と思いながらも、曖昧な部分を確定することはさすがにできないのでかなり細かいことを色々言ってしまったが、善処していただいたので本当に良かったです。

そんな感じで男根祭りには最近も行ってるとはいえ研究から離れてもう3年くらい経っていて勿論最近はトークイベントとかもなかった中の撮影だったので全体的にうまく喋れず、「もっとこう説明すべきだったなー」という後悔は随所に残っている。

でも祭りを4年位追っていた中でいろんな方と知り合えて繋がっていたおかげで許可取りとかもできたし、今回できる限りのことはやれたかなと満足してます!

何よりも今まで撮ってきた写真たちがテレビに映されるのはとても感慨深かったです。後半怒濤の如く出てきた祭りの写真と動画は全部フカザワ提供のものですのでそれは自慢したい(笑)

そして若干手前味噌感あるけど本当にめっちゃ面白い番組だった。15分あっと言う間だったな。あの情報量を15分に詰め込めた中井ディレクター、まじでグッジョブでした!!

もういないとは思いますが、ほかに性器崇拝で番組作りたいというディレクターさんがもしいらっしゃったら次回はもっとスムーズに協力できると思いますのでご連絡くださいませ(笑)

そして番組をご覧頂いた皆様、ありがとうございました〜!
再放送が明日(2/19)の深夜24:30から放送されるので見逃した方はそちらを見てね!


画像引用:「はなしちゃお!~性と生の学問~」HP

コメント

  1. えぞもも より:

    いつも楽しく拝読しております、初めてコメントいたします

    再放送拝見しました!
    テレビでも学術的に男根祭りを取り上げてもらえないだろうかと長年思ってました…感無量です。

    番組収録に至るまで様々な経緯があったとのこと、本当にお疲れ様でした。

    深沢さんの文章いつも面白すぎて定期で笑ってます!知的でお美しくて私の憧れの女性です。
    これからも珍スポ楽しんでくださいね!

    • フカザワ フカザワ より:

      めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!
      初めての事づくしで番組放送されるまで不安しかなかったのですが、本当にちゃんと学術的かつ面白くまとまってて良かったです!
      極度のむくみだけが心残りですが(笑)、楽しんでいただけて出た甲斐が有りました!
      ブログの更新相変わらず遅くて申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いします♪

  2. より:

    NHKサイトの過去動画で配信されているのを見てきました。

    あの深沢かまきり氏が動いてる!しゃべってる!美しい!緊張なのか口がもごもごしてる!

    それだけで感動です

    番組内容もよくまとまっていて興味深く見ることができました。

    動画のサムネがどこかの教授のおっさんになっていたのが不満です。そこは深沢氏のアップにしろよとNHKに言いたい。

    これからも時々更新してください。
    応援しています!

    • フカザワ フカザワ より:

      ご覧いただきありがとうございました!
      緊張は全くしていないので、喋りがもごついてるのは打ち合わせ無しで急に色々質問されて考えながら喋っていて歯切れが悪いせいだと思います(笑)もしくは正月太りと長旅の疲れでむくんで単に顔の肉に口が圧迫されてるかwww
      島村教授は私と違ってちゃんと研究をされている第一人者の方なのでサムネになるのは当然です!!! 
      例によって全然更新してませんが、またお越しください〜♪

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