スポンサーリンク

【島根】ここが黄泉の国への入り口! 猪目洞窟

皆さんは「ヨモツヒラサカ」をご存じですか?

おそらくヨモツヒラサカと言われても何のことやら・・・という人は多かれど、「黄泉の国」と言えばほとんどの人が知っている言葉だと思います。

ご存じ黄泉の国は日本神話に登場する「死者の国」。

イザナキノミコト(旦那)が死んでしまったイザナミノミコト(嫁)を追いかけて黄泉の国に行った古事記の話は有名ですね。


ちなみにこの話を知らない人のために分かりやすくまとめると、

嫁死ぬ

旦那が悲しんで死者の国である黄泉の国まで嫁を追いかけていく

旦那「愛しいイザナミよ、帰ってきておくれ」
嫁「愛しいあなた!実はもう黄泉の国のご飯食べてしまったの・・・シクシク。(その国の食べ物を食べるとその国の仲間となってしまうという供食の概念)でも黄泉の神様にちょっと相談してみますわ。あっ、その間わたしの姿は決して見ないでね」

旦那「オッケー!(でも見ないでって言われると見たくなっちゃうよね~~~あー見たいな、見たいな、ヨシ、見―ちゃお!)」

だがしかし、そこにはウジがたかる腐ったイザナミの姿が!!!!

旦那「ギャアアアアアア」
嫁「見ィ~たァ~なァ~~!!!!!!恥をかかせおって!!!!行け、ヨモツシコメ(部下)!」
ヨモツシコメ「アイアイサー!」
追いかけてくるヨモツシコメを必死に振り払いながら、逃げるイザナキ!更にイザナミによって遣わされた大勢の黄泉の国軍からの追随も剣を振り回して逃げる!!
命からがら、どうにかやっと黄泉の国の出口・地上世界の入り口へ!
イザナキは大岩を引っ張ってきて、その道を塞ぐことに成功した!

旦那「俺もうお前無理。離婚する」

嫁「ふざけるな。じゃあお前の国の人間を一日千人殺す」

旦那「じゃあ俺千五百人産むから!いいもん!殺されてもいいもん!!」

それで今現在も、人間は毎日死ぬ以上に生まれ、いなくなるということはないのです。チャンチャン♪

これがかの有名なイザナキの「黄泉の国訪問」の物語です。

すごく有名な話だけど、イザナミの豹変っぷりがなんと言ってもその最大の魅力である。
黄泉の国行ってすぐにもう飯食ってるし、ヨモツシコメ(黄泉醜女)とかいう謎の部下を既に従えてるし、正直イザナキさん離婚して正解っす。鬼嫁とかいうレベルじゃねえ。


さてさて、そしてここで登場した「黄泉の国の出口」であり「地上世界(葦原中国)の入り口」、つまり死者の国と生者の国の間にあるのが、「ヨモツヒラサカ」という名前の坂だと古事記には書かれています。

ヨモツヒラサカは漢字で書くと「黄泉比良坂」、つまり黄泉の国の坂。まんまの意味。

でもくら~~く陰気なイメージのある黄泉の国とこの地上世界はただの坂で繋がってるの??
なんかちょっと不思議な感じしますね??


実は「このヨモツヒラサカとは一体!?」には諸説あるんだけど、その前に「黄泉の国とは一体!?」という問題も立ち塞がっているのである。

一番ポピュラーなのは黄泉の国=横穴式石室のイメージという説。

昔の人が古墳に埋葬されていたのは常識だけど、我々のよく知っている豪族の前方後円墳やらなんやらと違って一般的なお墓はもっと簡素なもの且つ、共同墓地でもあったのです。

つまり新しい死体を埋葬しに行くと、既に腐り始めている前の遺体なんかがある超ホラーな空間だったわけですね。

イザナキが見てしまった「イザナミが腐っている情景」とは、古代人が実際に目にしていた「暗い通路を進むとウジのたかる死体がある光景」に基づいて作られたものというのがとてもポピュラーな「黄泉の国」の解釈。

これに基づいて考えると、「ヨモツヒラサカ」は横穴式石室に行く為の道である羨道がモデルになっていると思われるわけです。

そして神話世界は高天原(天界)-葦原中国(地上界)-黄泉の国(地下世界)という垂直構造になっているとする説が一般的であり、この古墳の羨道をモデルとした「ヨモツヒラサカ」を降りることでイザナキは黄泉の国へ行ったと考えられているのです。

ただ、この「サカ」は坂道ではなく「サカイ」、つまり「葦原中国と黄泉の国との境」だとする説もあり、実際に古代の人たちがどういうものを想像していたのかというのはまだ正確には分かっていなかったり・・・。

ちなみにわたしは「黄泉の国神話のイメージは横穴式石室」説よりも「黄泉の国神話のイメージは殯(もがり)」という説を推しています。

殯とは、人が死んだあとに喪屋(もしくは殯宮)というものを建てて正式に死体を葬るまでの期間にそこに死体を安置し、社会的な死までの期間を過ごさせるというもの。

殯では復活の儀式が行われていた可能性もあるけれど、一般的にはその期間で死者との別れを惜しんだり、権力者の場合は後継者争いなどが行われていたり、つまり殯は生と死の中間地点だったわけです。
殯が終わって初めて、死者は社会的に死んだことになるというわけ。

んで、このイザナキがイザナミを訪問するくだりこそまさに殯なのでは?という説もまた横穴式石室説と同じくらい有力な説なのです。

いずれにせよ、この黄泉の国神話はかなり写実的に描かれていて、古代人が実際の死体を見た上で想像された世界であることには間違いなさそう。


さてここまで説明したのは主に古事記におけるヨモツヒラサカの概要ですが、実は古代人の想像が現実化したホンモノの「黄泉の国」「ヨモツヒラサカ」が神話の国・島根県に実在するのであります!!
それは出雲市の「猪目洞窟(いなめどうくつ)」。

ここは縄文時代中期~古墳時代後期にかけての土器や弥生時代の人骨などが出土され、実際に墓地もしくは住居として使用されていたことが判明している洞窟。

「夢の中でさえこの洞窟の前に立つと死んでしまう」という伝承があるほど、死に直結したリアル「黄泉の国」として古代人には忌避されていた模様。

『出雲風土記』に「黄泉之坂、黄泉之穴」と記述されているのはこの洞窟のことであると考えられています。

先に横穴式石室をモデルとした黄泉の国の概念がありこの洞窟をそれに比定したのか、それとも黄泉の国自体が横穴式石室以外よりむしろ洞窟墓地からのイマジネーションを得て作られたものなのか・・・どちらが先か判らないけれど、古代人の実生活の中にも黄泉の国が存在したことは確実であるようです。

また、人類学者の先生によれば蛆がわき易い環境というのは古墳内のような閉鎖空間ではなくオープンエアになっているところだそうで、「蛆たかるイザナミの死体」というのはこういった屋外墓地に埋葬された死体から得たイメージなのではないかということでした。なるほどなあ~。


そして昨年、わたしはそのリアル「ヨモツヒラサカ」へ足を運んだのであった!!


この日は生憎の、と言うかむしろ黄泉の国訪問にはうってつけとも言える悪天候で、海は荒れ風は吹きすさんでていい感じ。

こちらが黄泉の国へ繋がるヨモツヒラサカの入り口の前で撮った写真。

IMG_0289.jpg
黄泉の国の前にいるというのに、ずいぶん楽しそうである。

夢の中ですらこんなことをしたら死ぬというのだから、こんなふざけているところを古代人が見たら「ちょ、何してんのあんたたちやめなさいよ!!」と怒られることうけあいの20代女三人組。
洞窟自体はぱっと見た感じそんなに派手でもなく、海辺によくある洞窟といった感じ。

しかしとにかく奥は真っっっ暗で何にも見えない。どこまで続いているのかも到底判らないほど奥が深い。

つまりその見えない先が黄泉の国なのであろう。

ということで、ここまで来たからには少なくともヨモツヒラサカには足を踏み入れなければ!!と私はその暗闇の先へと歩を進めた。


みんなが腰引ける中、ズンズンと奥へ進んで見たものの、あまりの暗さと奥深さにテキトーなところで退散するわたし。

とはいえ仲間内ではもっとも黄泉の国に近づいた人間になったわけだが、

そのとき撮った写真がこれである。

IMG_0298.jpg


お気づきであろうか?

IMG_02982.jpg


完全なる、死相

黄泉の国に入るかなり手前で引き返してきたつもりであったが、見るからにもう手遅れ。

洞窟突入前との人相の差は明らかである。


BEFORE
IMG_02892.jpg


AFTER
IMG_02982.jpg


生きながらにして自分の死相を知るとはいとをかし。


友人と共に地上世界よりの場所で再度撮影を試みるも、

DSC024712.jpg


やはりどう見ても手遅れ。

DSC02471.jpg


わたし、こんな顔でしたか?


むしろふらっと葦原中国にも戻ってきてしまいましたけど、大丈夫でしょうか。黄泉の国に帰らなくて大丈夫でしょうか。

昔の人の言葉はよく聞きなさいというけれど、古代人の意見も決しておろそかにできない。

恐るべし、黄泉の国・ヨモツヒラサカ。


皆さんも自分の死相が見たくなったら猪目洞窟へどうぞ。


(訪問日:2012年9月)


[猪目洞窟(いなめどうくつ)]
珍レベル:75%
おすすめレベル:50%
公式サイト(出雲観光ガイド)
住所:島根県出雲市猪目町1338
駐車場:路肩に止めるべし

大きな地図で見る

コメント

  1. 猪目洞窟は黄泉への入口

    猪目洞窟は『出雲國風土記』に登場する黄泉の穴と言われている洞窟で、1948年に発見された。縄文時代中期の土器片のほか、弥生時代から古墳時代後期までの人骨が13体以上発見されている。スマホのライトを照らしてみても、最深部は真っ暗で見えない。

  2. 猪目洞窟は黄泉への入口

    猪目洞窟は黄泉への入口【更新】近隣の情報

タイトルとURLをコピーしました